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No.2

もうすぐ春だから、
宇都宮を旅しよう。

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 一年はあっという間だという言葉をよく聞く。学生時代に感じていた一年の長さと、社会に出てからの一年はまるで違う、と。
 どうしてなのかと考えたことはあるだろうか。
 私は考えた。ロダンのような姿勢で考えた。満足な答えはでないとわかっていたが、考えた。自分なりにたどり着いた結論は、「日常のパターン化が犯人に違いない」であった。
 学生時代はもちろんのこと、若い頃というものは突発的な出来事にあふれている。しかも、それらは未知のもので新鮮で心ときめき、また怖くもある。だから、感じ方の密度が濃くなる。しかし、社会人となり、社会のなかで機能する人間になればなるほど、生活はパターン化する。日々の生活に未知の体験がどんどん減っていく。同じ時間に起き、同じ新聞を読み、同じ時間に同じルートをたどって会社へ行き、同じような仕事をし、同じように疲れて帰宅し、同じような時間を過ごして床につく。へたをすると、同じ時間に同じため息をついている。まるでひとつのビデオを毎日再生しているかのように……。
 どうしてそうなってしまうのだろうか。だれかにそうしろと言われたからだろうか? もともとDNAに組み込まれているからだろうか? 違うだろう。日常のパターン化は、ただ単に楽だからだ。しかし、たしかに楽チンではあるが、面白みはなくなる。
 そして、そのようなパターン化された日常が連綿と続き、気がつくと実に変哲のない一年を過ごしているということになる。年末に一年を振り返り、「はて、今年はどんな一年だったかな?」と自問するが、特別思い起こせることもなく、「時間が過ぎるのがますます早くなったな」と言っては自分を納得させ、ジャンジャン、となる。
 日常のパターン化は、ある程度やむを得ない。しかし、無条件降伏はまずい。なすがままの生活が毎日をつまらなくする。意識して生活に変化をつけるべきだ。大前研一氏も書いている。楽しみは先送りするな、と。
 さて、そのための手っ取り早い方法はなんだろう?
 旅であると思う。しかも身近なところへの旅である。住んでいる街に新たな感動や驚きを発見することができる「能力」を身につけたらこっちのものである。どこへ行っても、何をしても楽しめる人間になっている。
 まず手始めに自分たちが住んでいる街・宇都宮を旅してみよう。クルマでもバスでも自転車でも歩きでもいい。仲の良い人たちといっしょに、住んでいる街を旅する。五感をフルに使って、もう一度自分が住んでいる街を再発見する旅に出る。すると、いかに自分が住んでいる街を知らなかったか思い知らされるに違いない。感嘆することもあれば、憤慨することもあるだろう。喜怒哀楽を実感して、「人間力」を恢復するのである。
 日本もこうまで経済が成熟してしまえば、「物」の販売だけで従来の消費量を維持することは不可能であるはずだ。物が足りすぎて、身軽にしたいという人だって増えている。だれもが欲しがる「物」など、もはやないと言っても過言ではない。しかし、「楽しい時間」なら無限にある。楽しい時間を得るために、工夫しながらお金を使うことは本人のためにも社会のためにもなるのではないか。
 その第一段階として、住んでいる街への旅を推奨するのである。
 身近なところで楽しむ術を身につけていけば、きっと一年という長さの感じ方が変わるに違いない。

●企画・構成・取材・文・制作/髙久 多美男
●写真/小池 富雄

 

● fooga No.2 【フーガ 2002年 3月号】

●A4 約90ページ 一部カラー刷り
●定価/500円(税込)
●月刊
●2002年2月25日発行

 

おかげさまをもちまして、完売いたしました

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