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No.20

日光東照宮

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 境内から東照宮美術館へ抜ける小道を辿りつつ遠い昔を想った。舗装もされていないこの参道は四百年余もの時間、姿を変えることなくここに在り続けたのだ。堅牢に組まれた石積みは風雪に耐えながら苔生し、その背中で数百年、何百本という杉の巨木を支えている。動じることも砕けることもなく、ただ時が過ぎてゆくのをじっと受け止める。
 悲しいことに、わたしたちは日光東照宮について、長い間「観光地日光」の目玉としての少しの知識しか持ち合わせなかった。豪華絢爛たる荘厳な美に心を揺さぶられはしても、造形美の向こう側にあるものについて、考えをめぐらすことはなかったといえる。
 美しさの向こう側にある本質について学ばなければ、そのものの姿を捕らえることはできないだろう。
 1999年、東照宮、二荒山神社、輪王寺のいわゆる日光の社寺は世界文化遺産に登録された。それはどんな意味を持つのだろう。ただ歴史的、文化財的価値があるということなのか。それだけならば、世界中に該当するものはいくらでもある。恒久的に保護されるという事実は、人類にとっての大切な「何か」が存在していると、世界に認められたということである。
 日光東照宮に散りばめられた数限りない記号を読み解くことはとても楽しい作業だ。建物や装飾に込められた有形無形の意味や願いを、少しずつ理解していくうちにだんだんわかってくるだろう。ここは神殿であり、学校であり、ディズニーランドなのだ。
 古代の人たちが心のよりどころとした神様とはいったい何なのだろう。こんな時代でも万物に神は宿っているのだろうか。世界には幾多の神様が存在するが、戦争が絶えることはなく、日々の健やかな暮らしでさえヒヤリとさせられる出来事と隣り合わせだ。
 戦乱の絶えなかった日本を、安泰へと導く一時代があった。その平和をもたらすために「東照大権現」という神様が生まれたのだという。
 いつの時代でも永遠の平和を求めて、人はさまざまな挑戦を繰り返す。わたしたちが今、日光東照宮から学び取れることは、まだまだたくさんあるはずだ。

●企画・構成・取材・文・制作/五十嵐 幸子・都竹 富美枝
●写真/渡辺 幸宏

 

● fooga No.20 【フーガ 2003年 9月号】

●A4 約90ページ 一部カラー刷り
●定価/500円(税込)
●月刊
●2003年8月25日発行

 

おかげさまをもちまして、完売いたしました

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