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No.55

幽玄を舞う
観世流能楽師・渡邉洋子

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 観世流能楽師・渡邉洋子さんは、観世流宗家一門・関根祥六氏の内弟子を経て四年前に独立。自宅で能楽の教室を主宰しながら能役者として活躍しています。

 

 七百年近い能の歴史のなかでも、女性の能楽師が登場したのは戦後のことだといいます。伝統芸能の継承者として、生涯修業の身であると見定め稽古に打ちこむ渡邉さんが、凛然と着物を着こなすその身のこなしは、取りまく空気の色をも変え、人々が思わずふりかえってしまうような存在感に満ちあふれています。能の大成者世阿弥は、白い鳥が花をくわえている風姿を幽玄のたとえとしました。

 

 芸能として観客を魅了する工夫は、本質をついていればこそローテクがハイテクを凌駕する、その完成度が能のすごさです。語る言葉が理解できなくとも、物語全体を包み込む大きなうねりにのみこまれ、舞台の世界と一体化する極上の感覚。囃子方が演奏するお囃子のゆるやかな旋律に誘われ、舞手の所作に見入るうち、四本の柱に囲まれた三間四方の狭い空間に瞬間から無限の広がりを錯覚させられるように、過去と現在、近くて遠い距離、単純であるがゆえの複雑、すべての軸が交錯していきます。それはさながらアインシュタインの相対性理論のような不可思議さであり、能のおもしろさでもあるのです。

 

 平成十八年、「人類の口承及び無形遺産の傑作」として、能楽は世界で最初の世界無形文化遺産となりました。時代や文化の垣根を超越した深遠なる「能」の世界に魅入られた、渡邉洋子さんの幽玄の美の一端を味わってみてください。

●企画・構成・取材・文・制作/五十嵐 幸子・都竹 富美枝
●写真/渡辺 幸宏

 

● fooga No.55 【フーガ 2006年 8月号】

●A4 約90ページ 一部カラー刷り
●定価/500円(税込)
●月刊
●2006年7月25日発行

 

おかげさまをもちまして、完売いたしました

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