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No.81

本物の桃源郷
失われた日本の美を求めて

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 今回の主人公、上野修路さんの職業をなんと形容したらいいのだろう。ふと考えた。
 上野さんは茨城県潮来市で、刀剣や仏像などの金工を中心とした仕事を行っている。
 「ならば金工作家でいいではないか?」との答えが返ってきそうだが、ことはそう単純ではない。
 上野さんは、オリジナルの刀剣を創作する金工作家ではない。中世を生きた先人たちが創りあげてきた刀剣などをそのままに復元し、今の世に送り出すことを、自らの使命としているかのように制作に打ち込む。
 金工、という表現も正鵠を得ていないかもしれない。なぜならば、上野さんは鍛冶が作る刀身以外の部分(外装と呼ばれる)すべてを自分で作り上げてしまうのだから。金工に限らず、木工もやれば、塗りも行う。事実、頂いた名刺にも「日本の美を復活する」とあるものの、「職業」は書かれていないのだ。
 古い刀剣や仏像を、そのままに創りあげるなら、博物館にもレプリカの展示物があるじゃないか——なるほど、その通り。現在の博物館は、土器や仏像、武器・武具に至るまで、その多くをレプリカに頼っている。しかしレプリカの多くは原物を型取りした上にエポキシ樹脂を流し込み、彩色をするという実に安直な方法で作られている。だからたいてい中身はカラッポだ。見せるだけのものだからカラッポだ。
 薄っぺらな「コピー商品」を作るのであれば、そんな仕事はゴマンとあるし、本誌の特集に登場願うこともない。
 上野さんの仕事は、中世の刀剣類を中心とした作品の忠実な復元であるが、博物館で見ることができるレプリカとはまったく意味が異なる。中世人と同じ方法で、同じものを生み出し、そこに宿る中世人の心にも迫ろうとする。いや、中世人の心をとことん追求した結果が、刀剣や仏像といった作品に結実する、といった方が正しいかもしれない。細部に至るまで中世の心を再現しようと格闘するため、作品数は決して多くはない。短刀一振りであっても数ヶ月、太刀ともなれば数年の歳月が必要だ。三年以上経ってもいまだ完成を見ない作品もある。
 「これが私の職業です、と言えるようであれば、それは社会的に認知されたことになりますが、残念ながらいまだに私がやっている仕事を的確に表す言葉はないようですね」
 自分の肩書きを表す言葉がない、ということは、その仕事が孤高であり、誰もやっていないことを示している。
 上野さんの仕事は、脈々と受け継がれてきた土台の中から生み出されたものではない。自らが種を蒔き、必死で育ててきたものばかりだ。中世人の心をそのまま蘇らせるかのような作品群は、いったいどのような過程を経て生み出されてきたのだろうか——。

● fooga No.81 【フーガ 2008年 10月号】

●A4 約80ページ オールカラー刷り
●定価/500円(税込)
●月刊
●2008年9月28日発行

 

おかげさまをもちまして、完売いたしました

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