日本人として覚えておきたい ちからのある言葉【格言・名言】
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紺碧の将

作ることと育てることは違う

西辻一真

 株式会社マイファーム代表取締役・西辻一真さんの言葉を紹介。故郷・福井県三国町での家庭菜園がきっかけで農業に憧れ、後継者不足で放置される田畑を生かしたいと農家と人をつなぐマッチング事業を興した西辻さん。その思いは多くの共感者を呼び、土から離れた人と農をつなぐ「マイファーム」となって全国各地で新しい農業が展開されている。この言葉は某ラジオ番組で聞き知った。
 
 近年にみる、世界に蔓延する閉塞感は、土と人がかけ離れてしまった結果だろう。
 自然の一部である人間は、本来、他の動植物と同様に自然に育まれて生きているはずなのだが、いつからか人間だけが自然と距離を置くようになってしまった。
 科学の進歩と引き換えに。
 それも人間にとって必要な進歩だったと思えば、進歩した科学を生かしながら離れてしまった自然と仲直りしたい。
 
 過去を嘆くより、今を生きよう。
 それが自然のありようだから。
 
 物事が急速に進む現代に、自然のスピードは今も昔も変わらない。
 科学に慣れ親しんだ人間には、自然のスピードははるかに遅く感じるだろう。
 だから「急ぐ」ことはできても「待つ」ことは難しい。
 人と自然がかけ離れてしまったのもわかる気がする。
 
 西辻さんは言う。
「自分で野菜を育てると、待つことの大切さに気づきます。作ることと育てることは違います」
 
 自分で作り自分で食べるという「自産自消」が当たり前の社会になれば、人と自然の距離はより近づき、互いを生かし合う循環ができると西辻さんは考える。
 
 作ることはできても、それを育てることは難しい。
 動植物だけじゃなく、モノも、人との関係も。
 
 時間をかけて大切に育まれたものは、いつの時代も新しく美しい。
 琥珀色のウィスキーや飴色の古道具、音楽や本など、時間に育てられたモノたちは古くても瑞々しい生命力を感じさせる。
 
 言葉にすれば当たり前で簡単かもしれない。
 でも、それほど簡単ではないし、忘れがちなこと。
 作ることと育てることは、まったく似ても似つかない。

 

神谷真理子(本コラム執筆者)公式サイト「ma」

 

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(211225 第769回)

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