絶望のあるところに希望を
世界一美しい祈りの言葉だと言われる、アッシジのフランチェスコ(聖フランシスコ)の平和の祈り。そのなかの一節である。マザー・テレサは毎朝この祈祷文を唱えていたという。鉄の女として知られるイギリス初の女性首相、マーガレット・サッチャーも就任直後の演説で一節を引用した。他にもこの祈祷文を読み上げる宗教家や政治家は多い。ただ、この祈祷文、フランチェスコ本人の作ではない。おそらく弟子たちか、あるいは彼をよく知る人たちによるフランチェスコの思想や口癖をまとめたものなのだろう。
初出からさまざまな言語で翻訳され、雑誌などに転載されたことで文言に微妙な違いはあるものの、どれも意味は同じだ。
全文を紹介しよう。
―― 主よ、わたしをあなたの平和の道具としてください。
憎しみのある所に愛を
侮辱のある所に許しを
分裂のある所に和合を
誤りのある所に真実を
疑いのある所に信頼を
絶望のある所に希望を
闇のある所に、あなたの光を置かせてください。
悲しみのある所に、喜びを置かせてください。
主よ、慰められるよりも慰め、
理解されるより理解し、
愛されるよりも愛することを求めさせてください。
なぜならば、与えることで人は受け取り、
忘れられることで人は見出し、
許すことで人は許され、
死ぬことで人は永遠の命に復活するからです。
もしかすると誤解を受ける部分もあるかもしれない。
かの国の人々のことを考えれば、適切ではない言葉もあるとは思う。
でもしかし、国や宗教の違いにかかわらず、胸にひびく祈りではないだろうか。
少しでもこの祈りが、だれかの慰めになったらと願うばかりだ。
今回は「手向草」を紹介。
「手向草(たむけぐさ)」とは、桜、松、すみれの異称です。花を手向ける、供物を手向ける、神仏や死者の魂へささげものを差し出す仕草を「手向ける」と言いますが、手向草はその品々のこと。続きは……。
(220417 第790回)