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人生の意義は心境を得ること

田口佳史

 人は何のために生きるのか。

 これは古今東西、問われ続けてきた人生の大命題である。それに対し100%正しいという答えがなかったから問われ続けてきたともいえる。

 しかし上掲の東洋思想家・田口佳史氏の言葉を聞いて、これ以上に正鵠を射た答えはないと思えた。今から6年前、『Japanist』最終号の取材でのことである。

 氏はこうも語った。

「ひとえに人生は自分の心を探るものであり、けっして自分の外側にあるものを得ることではありません。心のあり方を見つめ、自分の理想の境地に至るために日々を生きることが大切です。自分の求める境地を得られれば、それ以上いったい何が必要かと思えるでしょう」

 そういう境地を得るために有効なのは、すぐれた書物を読むことや偉人の生き方に学ぶことだと言葉を継いだ。

 

 傍から見れば成功者が精神的に追い詰められている事例はけっして少なくはない。おそらく、その人たちはそうなることを目指して努力したのであろうが、それが叶ったといって、必ずしも自分の境地を得たとは言えない。理想(目標)を追いかけることは大事だが、地位や収入や名誉といった外形的な到達点に至っても、心の満足とは別ものだということを認識する必要がある。仮に外形的な大成功をおさめたとして、それによって納得できる心境を得ていないのであれば、その成功は空疎なものであろう。

 

 ああ、幸せだなあ……。

 心境を得るとは、そういう心持ちになるということ。

 しみじみそう思える人は、すでに人生の成功者といえるかもしれない。

(241021 第866回)

 

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