日本人として覚えておきたい ちからのある言葉【格言・名言】
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紺碧の将

そんなに情報集めてどうするの そんなに急いでどうするの 頭はからっぽのまま

茨木のり子

 辛辣な言葉で世相に切り込む詩で知られる、戦後を代表する詩人のひとり。「わたしがいちばんきれいだったとき」、戦争に踏みにじられ、青春を失ったとの思いから、反骨の精神を生き生きとした言葉に表した。『自分の感受性くらい』や73歳の時に発表した『倚りかからず』は彼女の代表作。

 

 表掲の言葉は「時代おくれ」のなかの一節。全文を紹介しよう。

 

車がない

ワープロがない

ビデオデッキがない

ファックスがない

パソコン インターネット 見たこともない

けれど格別支障もない

 

そんなに情報集めてどうするの

そんなに急いで何をするの

頭はからっぽのまま

 

すぐに古びるがたらくたは

我が山門に入るを許さず(山門だって 木戸しかないのに)

はたから見れば嘲笑の時代おくれ

けれど進んで選びとった時代おくれ

もっともっと遅れたい

 

電話ひとつだって

おそるべき文明の利器で

ありがたがっているうちに

盗聴も自由とか

便利なものはたいてい不快な副作用をともなう

川のまんなかに小船を浮かべ

江戸時代のように密談しなければならない日がくるのかも

 

旧式の黒いダイアルを

ゆっくり廻していると

相手は出ない

むなしく呼び出し音の鳴るあいだ

ふっと

行ったこともない

シッキムやブータンの子らの

襟足の匂いが風に乗って漂ってくる

どてらのような民族衣装

陽なたくさい枯草の匂い

 

何が起ころうと生き残れるのはあなたたち

まっとうとも思わずに

まっとうに生きているひとびとよ

 

 

 茨木さんがこの詩を書いたのがいつなのか知らないが、遅くても2000年前後。この頃すでに「頭からっぽ」化現象は始まっていたが、もし彼女が現代人の姿を見たら、どう思うのだろう。

 ITの恩恵をすべて葬り去ることできないし、すべきでもないと思うが、踊らされるまま細切れの情報をシャワーのように浴びる人間にはなるまいぞと強く思う。

 強くそう思わねば、このバカな情報の渦に巻き込まれ、ますますバカになりそうだ。

 さて、自分の生活を振り返り、どの部分をアナログに戻そうかと思案している。

(250219 第874回)

 

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