健全なる身体に宿れる健全なる精神
ユヴェナリス
小学校の教室に標語として掲げられていたこの言葉が「健全な体にこそ健全な精神が宿る」というような優生思想的な意味では決してないことを知ったのは、つい最近のことだった。表題ではあえて「宿れる」としてあるが、この格言の原典であるユヴェナリスの詩には、身体と精神を関連付ける「宿れる」という言葉は存在しない。
人の欲望には再現がない。名誉、金、地位・・・。それらは身を滅ぼす元凶である。幸せになるために祈るのならば、せいぜい「健全な身体と健全な精神」であると、ユヴェナリスはいう。
健全な身体と健全な精神というたった二つでさえ、あわせもって天に旅立つことのできる人がどれほどいるかを想えば、古代ローマの詩人が示したシンプルな生き方は、現代日本という複雑を極めた時代にこそふさわしい。
(120515第38回)