私たちの道徳の基準は、社会の過去の要請によって生まれました。しかし、その社会はつねに同じであるべきでしょうか
岡倉天心
日本文化の啓蒙書として今なお世界中で読み継がれている『茶の本(THE BOOK OF TEA)』。その中の一文である。
道徳の基準は同じであるべきか?
「宇宙、自然はつねに進化してやまない」とは四書五経のひとつ『易経』の言葉だが、これにあてはめるとすれば、自然の一部である人間が創りあげた道徳もまた、進化してしかるべきだろう。
「『現在』はうつろいゆく『無限』であり、つねに相対性をもった範囲の中にあり、相対性であるためには調整が必要。調整とはすなわち技術よってなされ、生きるための技術とは、環境に対する私たちの普段の調整に他ならない」と、天心は言う。
不易流行。人間が人間であるための変化は、ときに必要とされる。
(150928第123回)