草花もふくめて、すべて飽きないものは本質的なものですよね。お米を筆頭に……。
川瀬敏郎
ある対談で、料理研究家の辰巳芳子さんが華道家の川瀬敏郎氏にこう訊ねた。
「先生、人間はなぜ火を見ているのって飽きないんでしょうね」
そのときの川瀬氏の言葉である。
食べ飽きない、見飽きない、聞き飽きない、読み飽きない、居飽きない……。
「飽きない」とは、最高の褒め言葉だと思う。
山や川、黄昏どきの空や星月が輝く夜空などは、いつまでも眺めていたいと思うものだ。
目新しいものに興味をそそられるのが動物の本能だとすれば、飽きないものは、つねに何かしら新しい発見があるということ。
いずれ慣れ親しんだものに落ち着くことはわかっていても、斬新で、これまでにないものに人は心惹かれる。
とはいえ、目新しいものが本質的でないとは言い切れない。
途絶えることなく再生をくり返しながら持続させることで、目新しいものも本質的なものへと生まれ変わるのではないだろうか。
(151004第125回)