練習は裏切らないといいますが、練習が裏切ることもある
イチロー
自分自身を高めるストイックさにかけては右に出るものはいないであろう、イチロー選手。小学3年生の頃から7年間、ほぼ毎日、約200球ものバッティング練習を行っていたことは有名である。
日々の練習に向き合う姿勢は、その頃から変わっていない。いや、世界の舞台で活躍する今をもってしても、その身体能力が高まりつづけていることを思えば、時計の針のように規則正しく繰り返される練習が超人的なイチロー選手を作りあげていることは明らかであろう。
その彼が言うのだ。
「練習は裏切ることもある」と。
努力は必ず報われるか。
否。
そうとは言い切れない。ただし、ひとかどの人物と言われる者たちは、必ずといっていいほど努力をしている。
努力の人であるイチロー選手が発したこの言葉は、だれよりも練習に練習を重ねてきたからこそわかる、練習という行為の裏に隠された真実でもある。
練習中の快調さ、手応え、それらはみな、本番という現実の前には幻となることがある。練習中の感覚が、あたかも揺るぎない自分の感覚であると錯覚をおこしてしまうというのだ。そのことをイチロー選手は身を以て体験し、そこから学んだ。
練習は裏切ることもあるかもしれない。
しかし、やったことは無駄にはならい。その体験が必ず生かされるときがくる。
(160216 第167回)