アテネでは、貧しいことは恥ではない。だが、貧しさから脱出しようと努めないことは恥とされる
アテネの名門貴族に生まれ、若き指導者となったペリクレス。彼が民衆の前でふるった誇り高い演説を、知っている人は多いだろう。
これほど気高く美しい演説はない。過去のものでありながら、今もなおその輝きは失せてはいない。古くて新しい、現代にもじゅうぶん通用する演説である。その一節を取り上げた。
「われわれアテナイ人は、美を愛する。だが、節度をもって。
われわれアテナイ人は、知を尊ぶ。しかし、溺れることはなく。
われわれアテナイ人は、富を追求する。だがこれも、可能性を保持するためであって、愚かにも自慢するためではない。
われわれアテナイ人は、私的利益を尊重するが、それは公的利益への関心を高めるためでもある。なぜなら、私益追求を目的として培われた能力であっても、公的な活動に応用可能であるからだ。
時の言うことをもっとよく聴け。時はもっとも賢明なる法律顧問なり。
アテネでは政治に関心を持たない者は市民として意味を持たないものとされる」
政治や経済に目を向ければ、嫌でも自分の生活水準や意識の高低に目を向けざるを得ない。
自国の情勢を知ることは自分自身を知ることであり、さらには、世界やその中での立ち位置を知ることにもつながる。
折にふれて、置かれている状況を確かめ、良い方向に軌道修正していく必要がある。
最後に、忘れてはならないことをつけ加えておこう。
経済的な貧しさはもとより、心の貧しさはそれ以上に脱出しようと努めねばなるまい。
(160313 第175回)