人生において万巻の書を読むより、優れた人物に一人でも多く会う方がどれだけ勉強になることであろうか
経済学者であり教育者であった小泉信三が、天皇陛下の教育係を務めていたことは有名である。
教育者の言葉だからこそ重みがある。
本離れとも活字離れともいわれる昨今、ちらほらと電車の中でも読書風景が見られるようになった。芥川賞を受賞した又吉直樹の「又吉効果」とでもいうのだろうか。
とはいえ、右も左も前も後ろもスマホ中毒者(?)ばかりでは、本を開いて読書をする人が際だって美しくみえてくるのも当然かもしれない。
かすかに聞こえる、ぱらぱらとめくる紙擦れの音さえ耳にここちいい。思わず、どんな本を読んでいるのだろうと覗き込みそうになってしまう。
電子書籍を読んでいる人もいるのかもしれないが、やっぱり紙の手触りや香りを感じながら一枚一枚めくって最後に本を閉じるあの瞬間の、なんともいえない気持ちは、電子書籍では味わえないような気がする。
ましてや、時間つぶしにSNSというのは、あまりに「時間」に失礼ではないだろうか。つぶされる「時間」の身にもなってもらいたい。
本の中で出会う架空の人物や偉人たち。彼らから学ぶものは数多い。
だが、実際に人に会い、肌で感じたものが確かであるのも事実。
絵に描いた餅がどんなに美味しそうであっても、目の前にだされた餅には勝てないのとおなじように。
よりよい人生を送りたいと思うなら、優れた人物との交流を深め、一人の時間は良書を読んで過ごしてみてはいかがだろう。
(160520 第197回)