生きがいを感じている人は、他人に対してうらみやねたみを感じにくく、寛容でありやすい
以前にも紹介した精神科医の神谷美恵子女史の著書『生きがいについて』から抜粋した。
著者自身、「何のために生きるのか」という大命題を生涯探求し続けていたこともあり、後に精神科医としてハンセン病患者の心と向き合っていく中で、医師として著述家として、また母親としての立場から、求め続けてきた問いへの光明を見出そうとするその姿に励まされる人は多いだろう。いつの時代も同じなのだと。
人をうらやむ背景には、自分もそうでありたいと願う心が隠れている。
情報化社会の現代は、そういう人間の奥深くに眠っている心理を目覚めさせる。
悪く捉えれば、そこに振り回されて自己を失うおそれはあるが、良いように考えれば、本来の自分が目覚める可能性があるということではないか。
自分はこうなりたかったんだと気がつけば、そうなるための努力だってできるだろう。
いや、自分はちがう! と思うならそれはそれでいい。
どちらにせよ、「自分の生き方を」を考えるきっかけにはなるはずだ。
神谷氏はこうも言っている。
「苦労して得たものほど大きな生きがい感をもたらす、ということは一つの公理ともいえる。生きがいを感じられないときは、他者へ貢献できることを探してみればいい」
ただし、これはボランティアを推進しているわけではない。
善意は自己満足に陥りやすい。
ほんとうの貢献とは、貢献する相手がそれとは気づかないところで大きな支えとなっているものが多いのだから。
(160610 第204回)