偉大な本は、おしなべて退屈な部分を含んでいる
バートランド・ラッセル
20世紀を代表する哲学者にして数学者、論理学者として知られるバートランド・ラッセル。彼の説く幸福論は、「周到な努力さえすれば誰でも幸せになれる」というもの。
あたりまえのことだが、そのあたりまえができない人びとに向けたといっても過言ではない著書『幸福論』には、論理学者らしい見解で人生の本質を突く。その中の一節である。
多くの人は、退屈を好まない。
退屈を埋めようと、絶えず刺激あるものを求めようとする。
それがどれだけエネルギーの消耗につながっているかも知らず。
ラッセルは、古典を生み出したソクラテスやカント、ダーウィンにある共通点を見つけた。
「静かな生活が偉大な人びとの特徴であり、偉大な事業は、粘り強い仕事なしに達成されるものではない」
そして、その姿を自然のありようになぞらえる。
「私たちの生は〝大地〟の生の一部であって、動植物と同じように、そこから栄養を引き出している。〝大地〟の生のリズムはゆったりとしている」
ラッセルは、退屈に耐える力を「実りある単調さ」と表現する。
スケジュール帳が予定でまっ黒になってはいないだろか。
そんな人へラッセルは警鐘を鳴らしている。
「退屈を恐れて浅薄な興奮ばかり追いかけていては、人生が確実に貧しくなる」と。
(160801 第221回)