きれいは汚い。汚いはきれい
マクベスの魔女
シェイクスピアの四代悲劇のひとつ、『マクベス』の冒頭で、3人の魔女が語る不可思議なセリフの中の一節である。
悪があるから善があり、醜があるから美がある。
相反するものは、それで一対をなす。
片方だけでは言葉すら存在しないし、視点が変われば現象は一変する。
ある人が言った。
この言葉は般若心経の「色即是空」に通じると。
「色即是空」とは何か?
ものの本にはこう書いてあった。
「色即是空は、すべて実態はないということ」だと。
実態がないとはどういうことか。
谷川俊太郎氏の『わたし』という絵本を思い出した。
〝わたしは、男の子から見ると、女の子。
赤ちゃんから見ると、おねえちゃん。
おにいちゃんから見ると、いもうと。
見る人によって、「わたし」は変わる〟
そう。
「わたし」というのは、状況に応じて七変化も八変化もしてしまう存在なのだ。
色はすなわちこれ空。
目に見えるものの向こう側には何があるのか。
角度を変えてみれば、見えないものが見えてくるかもしれない。
(160817 第226回)