自分のことだけを考えてる人は弱いです
銀座にギャラリーを構える「一穂堂サロン」のオーナー、青野惠子さんの言葉だ。
「一穂堂」という名前は、〝豊葦原の瑞穂の国〟わが国日本が由来である。
彼女は37年前にアメリカへ行ったとき、稲穂を一本もっていったというほど、自国愛に溢れている。
「祖国を愛さない人は弱いだろう」と彼女は言う。
「一穂堂」は、現存するアーティストたちの作品だけを紹介しているギャラリーなのだが、その理由を彼女はこう語る。
「彼らが食べていけないと、日本の文化は滅びます。昔のものばかりがいいと言われたら、私たちが今生きている意味がありません」
われわれが当たりまえのように今の生活が送れるのは、長い歴史を支えてきてくれた先人たちのおかげ。
衣食住はもちろんのこと、一昔前までは考えられないような贅沢で豊かな環境になっている。先人たちの智恵と現代技術がひとつになった現れだろう。
今を生きている自分たちだけが、ある日突然、どこからかパッと現れたわけではない。
両親や祖父母、それ以前のご先祖さまたち、地縁、血縁が交わって、今ここに生きている。
その不思議を思わずにはいられない。
「オリンピックの選手たちは、家族のため、国のためと思うから、あんなに強いんです。がんばっている彼らから感動をいただいてるのに、恩返しをしなければ申し訳ない」
彼女の考える「恩返し」とは、世界に羽ばたいていく人たちはもちろんのこと、未来を生きる人たちが自国を誇れるようにすることだ。
生まれてきたからには、与えられた役目を果たしたいとも思うだろう。
それが叶うのは、〝だれかのために〟という使命感に駈られたときではないだろうか。
(160904 第232回)