つまらないと思った仕事でも、一生懸命やってみろ。そうしたらおもしろくなる
映画界の巨匠、黒澤明の名言である。彼の甥でありエッセイストの島敏光氏の著書『黒澤明 59の言葉』から抜粋した。近親者であったからこそわかる、〝世界の黒澤〟の本質にせまった言葉がずらりと並ぶ。数々の映画の名場面に使われたセリフは、そのまま黒澤の思いだったにちがいない。名台詞に添えられた島氏のエピソードにある黒澤のひと言ひと言が胸を打つ。
「一生懸命やれば仕事はおもしろくなる」
これは、黒澤の口癖だったという。
数々のインタビューで、映画への情熱やモチベーションの持続について問われると、決まってこう答えたそうだ。
「一生懸命やってると仕事はおもしろくなるんだよ。おもしろくなると努力しちゃう。それが本当の努力であって、努力しなきゃいけないと思ってやるのは、本当の努力じゃない」
たしかにそうだ。
「楽しいから笑うんじゃなく、笑うから楽しくなる」と言った人もいた。
自分の気持ちは自分でいくらでも持ち上げられる。
不思議なもので、笑顔でいると些細なことでも嬉しくなるし、そのうち本当に笑顔になれることが訪れる。
黒澤のモットーは、「なんでも真面目に」だったという。
働くときは真面目に働き、遊ぶときは真面目に遊び、寝るときも真面目に寝る。
仕事でもなんでも一生懸命やっていると、その一瞬一瞬が煌めき、眩しいくらいの光を放ち始めるのかもしれない。
黒澤の作品がそれを証明している。
(161113 第255回)