人の言に耳を傾けないというのは、みずから求めて心を貧困にするようなものである
松下幸之助
経営の神様と呼ばれた松下幸之助が残した数ある言葉の中のひとつ。
どの言葉も姿勢を正されるものばかりだが、中でも幸之助翁が何度も繰り返し言っていたのは「素直であれ」ということだった。
柔能く剛を制す。何をするにしても、素直さがモノをいうのだと。
若い頃の特権は、大人たちから怒られたり注意を受けることができるということだ。
もちろん、その時にはそれがありがたいとは思えないし、むしろ「大人はウルサイ」としか思えないだろう。
だが、ひとたび歳も中年に差し掛かり、「ウルサイ大人」の仲間入りをすると、怒られることも注意されることもほとんどない。
だからといって、間違いがなくなったわけではない。
子は親の鏡と同じく、他人は自分の鏡である。
好きな相手には自分の求める姿を見、嫌な相手には自分の見たくない嫌な部分を見てしまう。
そう考えると、人の言葉というのは、何かを気づかせるために発せられた言葉なのだろう。
幸之助翁が言うように、人の言に耳を傾けないのは、せっかくの成長の機会を自ら放棄しているということだ。
「ウルサイ大人」諸君。
何も言われないからといって胡座をかいていてはいけない。
それは、単に言いづらくて誰も何も言えないだけなのだと、心しておこう。
(170112 第275回)