こけたら立ちなはれ
松下幸之助
松下幸之助翁の言葉を取り上げたのはこれで何度目だろうか。いっそ、講演録なるものをそっくりそのまま紹介したほうがいいのではないかと思うほど、存在そのものが字引のようである。
ちょっとした言葉にも、幸之助翁らしい優しさが感じられてほっとする。
転んだら立ちあがる。
体の運動機能が正常であれば、誰でもできることだ。
動作としては。
しかし、行動では?
それがなかなかおいそれとはできないから行き詰まることもあるのだろう。
「ごちゃごちゃ言わんと、こけたら立ちなはれ。こけたままやったら、車にひかれて死んでまうで」
と、言ったかどうかはわからない。
わからないが、こけたままでは野垂れ死ぬだけだというのはわかる。
「こけたら立ちなはれ」
ときには、こんな簡単な言葉で救われることもあるのではないだろうか。
(170220 第288回)