其の脆きは破り易く、其の微なるは散じ易し
『老子』より
老子の『道徳経』守微第六十四は、事にあたるときの心構えが記されている。
「其の脆きは破り易く、其の微なるは散じ易し」
ものごとは脆いうちに扱えば、厄介な問題になる前だから解消しやすい。まだごくごく小さいうちなら、粉々に打ち砕くのは簡単だ、と。
「ついうっかり」ということはよくある。
取るに足らないことから重大なことまで。
「しまった!」と思ったときはもう、後の祭りである。
気を引き締めてはいても、人間は忘れる生き物。
意識して立ち止まる必要がある。
「合抱の木は、毫末より生ず。九層の台は、累土より起こる。千里の行は、足下より始まる」
かかえるほどの巨木も、最初は毛筋の先ほどのわずかなものから始まる。巨大な堤防も一杯の土から始まり、千里の旅行も一歩から始まる。
そう。
すべては小さいものから始まるのだ。
われわれ人間もそうであるように。
良きにつけ悪しきにつけ、はじまりは一粒の種。
うっかりミスを防ごうと思うならば、ミスの種を蒔かないこと。
蒔いてしまったら芽が小さいうちに対処するに限る。
(170226 第290回)