人々の運命には満ち潮と干き潮がある。この潮勢を機敏にとらえる者のみ、よく幸福の彼岸に達する
シェイクスピア
古典文学の帝王、シェイクスピアの作品には真理がちりばめられている。
彼が生きた16世紀、17世紀の人間ドラマが克明に描き出されているであろう作品群は、21世紀の今をもってしてもまったく色あせることはない。それどころか、いきおい今の乱世にこそふさわしいのではないかと思わせる。
人間とは、かくも変化に乏しい生き物なのか。文明が急速に発展すればするほど、それとは意に反して人類は逆行しているように見えるのは気のせいか。
人間はロボットではない。
動植物と同じ、自然界に存在する一生物である。
違うのは、思考し、想像する脳を持っているということ。
それ以外にもいろいろあるかもしれない。
とはいえ、一生物であることは変わらない。
生物の起源をたどれば大海に行き着く。
大海の一滴、一滴が、われわれの祖先である。
だとすれば、母である大海の干満が身の内にもあることを知るのは重要ではないか。
潮勢は人によってそれぞれ違う。
他人の潮勢に合わせていると溺れ死ぬ。
自分の満ち潮はいつ何時で、干き潮時はいつなのか。
シェイクスピアのごとく目を皿にして世の中と自分を俯瞰して見てみよう。
(170523 第318回)