薔薇ノ木ニ 薔薇ノ花サク。 ナニゴトノ不思議ナケレド。
北原白秋
詩人であり、童謡作家であった北原白秋の詩集『白金之独学』より、「薔薇二曲」の一曲目。
藤原道三作曲で歌われている。NHKの某子供番組で流れていたことで、広く知られたようである。
なんのことはない。
薔薇の木に薔薇が咲いたというだけだ。
しかし、考えてみれば不思議なことではないか。
だれもなにも教えていないのに、時期がくればちゃんと咲くのだから。
動物だって、右足が出れば左足がでるというように、左右交互に手足が動くから歩いたり走ったりできるのだし、呼吸をすることも、心臓が動くことも、自分の意志とはまったく関係ない働きである。
すべての生き物に備わっているこの不思議な働き。
これこそ、天からの授かり物だろう。
春来たらば草自ずから生ず、である。
では、二曲目を紹介しよう。
薔薇ノ花。
ナニゴトノ不思議ナケレド。
照リ極マレバ木ヨリコボルル。
光リコボルル。
花盛りが過ぎれば、薔薇も木からこぼれ落ちる。
働きの終わりである。
しかしそこには、土に帰らんとする美しい薔薇が横たわっているではないか。
性を生ききった末期は光りのごとく美しい。
なんとこの世は美しい。
今こそ植物たちの姿をみならいたい。
(170616 第326回)