一粒の砂に世界を見、一輪の野の花に天を見る。
イギリスのロマンティシズムを代表する詩人といえば、ウィリアム・ブレイク。有名な詩『無垢の予兆』の冒頭がこれだ。画家でもあった彼の挿絵つきの詩は、よりいっそうブレイクの世界観を表す。その世界観は禅的であり、禅の大家、鈴木大拙も著書『禅』の中で引用している。
ブレイクは、小さなものの中に広がる大きな世界を謳った。
一粒の砂に世界を見、
一輪の野の花に天を見る。
汝の掌に無限を捉え、
一時の中に永遠を見よ。
一滴の水は大河となって大海へ流れるし、大海の水もまた、天に昇って降り注ぐ。
小さな世界と大きな世界は、分かつことなくつながっているのだ。
一粒ひとつぶの砂は、どれひとつとして同じものはない。
同じではないけれど、砂であることにはかわらない。
一輪の野の花は力強く、与えられた場所でその役目を果たそうと懸命に生きている。
誰もがみんな、その掌に無限の可能性を握りしめて生まれてきた。
「ぜったいに離すもんか」と真っ赤な顔で泣き叫びながら、ぎゅっと力強く、何かを掴んで。
消えていく今があり、生まれてきた今があるように、今という瞬間は、ただのひとときもじっとはしていない。
そうやって、時はつながってきた。
陽の光に照らされ、きらきらと輝く塵は美しい。
空に溶けこみ、目では見えないほど微少なのにもかかわらず。
ときにはじっと、この世界をみつめてみてはどうか。
大きなもののなかには小さきものが、小さきもののなかには大きなものがあることを、この世界は教えてくれる。
宇宙旅行にいかなくても、虫眼鏡でのぞくほどの小さな世界の中に、広大な宇宙は見える。
(170924 第357回)