学びがすべてを変えてくれる。
文筆家・詩人神谷真理子さん
2017.10.09
『Japanist』の取材記事や絵本の物語制作など、フリーの文筆家として活躍する神谷真理子さん。詩集『たったひとつが美しい』は多くの読者を獲得し、魅了した。
学びによって人生が180度変わったという神谷さんに、その過程を聞いた。
フリーペーパーとの出会いによって、人生が180度変わる。
いつごろから文章に興味をもっていたのですか。
幼い頃から本を読むのが好きで、絵本や児童書などをよく読んでいました。だからなのか、自然を眺めて空想にひたることがよくあって、ときどき詩を書いたり、短い物語を書いたりしたことはありました。でも、どちらかというと、文字にするより絵を描くことの方が多かったですね。ですから、将来、文章を書く仕事に就くなんて考えたこともありませんでした。
私は兵庫県姫路市で生まれ育ったのですが、22歳のときに東京に出てきたのも、どうしても田舎を出たかったことと、絵を描く仕事をしたいと思ったからです。
東京に出て来てから、すぐ文章を書く仕事に就いたわけではないのですね。
はい。30代の後半、いろいろなことがあって追いつめられていた時期があったのですが、そのときのある出会いによって人生が大きく変わったのです。
あるとき、近所のコンビニに寄って買い物をし、出ようとしたときでした。入り口付近のマガジンラックにとても印象的な表紙のフリーペーパーがあって、「こころの栄養でじぶん磨き」という文字を見つけたんです。私はふだん、フリーペーパーを手に取ることはないのですが、そのときは妙に惹かれて持ち帰ったのです。それが『たらく』でした。2009年4月のことです。
『たらく』といえば、弊社の髙久が編集長として関わったフリーペーパーですね。
そうです。家に帰ってページを繰るうち、ざわざわーっと鳥肌が立ってきて、髙久さんのエッセイを読んだとき、「これだ! 私が求めていたものはこれだったんだ!」と電気が走りました。そこにはこう書いてあったのです。
「自分が好きなことを見つけて無我夢中で取り組み、ひとつずつ目標をクリアする。そうやって愉しみながら、自分という人間をぶ厚くしていく……。今がベストで、未来には未知の楽しみがある。これが、多樂の本質である」と。
あのときの感動は忘れられません。「見て見て!ついに見つけたよ!」って、当時、同居していた妹に大騒ぎしながら言ったことを今でも覚えています。薄っぺらな自分から何とか抜け出したいと、ずっと願っていたんです。
その後、髙久さんの著書をいくつかネットで買いました。特に『多樂スパイラル』はボロボロになるまで読みました。そして、感想を発行会社のコンパス・ポイントに送りました。本を読んで感じたことを伝えたかったのですが、そのうち髙久さんご本人からメールが届いたんです。
それをきっかけにして文章を書き始めたわけですね。
メールのやりとりをするうち、「あなたの言葉はきらめきがある。詩かエッセイを書いてみたら?」と薦められて、そんなことを言われたのは初めてだったので、ちょっと調子に乗って書いてみました(笑)。それからですね、言葉が降ってくるようになったのは。思いつくままに書いた詩を髙久さんにメールで送っているうち、髙久さんが『Japanist』のパートナーである奥山(秀朗)さんに見せたところ、奥山さんが気に入ってくださって詩集を作ろうということになったんです。それが『たったひとつが美しい』です。その詩集を、奥山さんが全国の600ヶ所以上の養護施設に寄贈してくださいました。いい詩ですねと言ってくださる方が何人もいて、とても励みになりましたね。
それから『Japanist』の取材記事や本の原稿を執筆されるようになったのですね。
はい。ただ、高久さんからは、文章を書き始めたのも遅いし、基礎ができていないから、猛勉強が必要だよと言われました。もともと勉強は嫌いではないのですが、そのときに覚悟を決めたんです。死んだつもりになってゼロから学び直そうと。もっと成長したい、新しい自分に生まれ変わりたいと切に願っていたときに出会った『たらく』でしたから、それまでの自分を一端封印しようと思ったのです。そして、リベラルアーツを学びなさいとおっしゃる高久さんに倣って、真剣に学び始めました。
弊社の代表(髙久)はなにかといえば、「リベラルアーツを学べ」と言いますよね。
そうなんです。ただ、リベラルアーツって間口が広いですから、正直、何から学んでいけばいいかわからない。そこで、髙久さんがいいというものは片っ端から触れてみようとしました。本、音楽、美術、思想……。なにもかもです。それから6年くらい経っていますが、今は学ぶことが楽しくて仕方ないですね。原稿を書くのは大変ですが、力を出し切って書き上げたときの喜びはなにものにも代えがたいものがあります。
リベラルアーツって、大上段に構えたアカデミックなものではなく、日々の生活のなかで学ぶということでもありますよね。
そうですね。二人の子をもつ母親としても、日常で子供たちから学ぶことはとても多いです。むしろ、そっちのほうが学ぶことは多いんじゃないかと思うほどですよ。どんなときも、彼らの存在が私を強くしてくれます。
これからも頑張って、いい作品を書き続けてください。
はい。ありがとうございます。