人間の使命とは、可能な限り「自分自身」になること
人間には5段階の欲求があると説いたマズロー。通称「自己実現理論」とも呼ばれる欲求段階説は、企業経営や労働環境の改善に大きな影響を与えたと言われている。
自己実現に最も重要な要素としてマズローが力説するのが、この言葉である。
可能な限り「自分自身」になることとはきっと、ありのままの自分になることなのだろう。
それが、人間の使命なのだと、マズローは言う。
有史以来、人間は「自分自身になること」や「ありのままの自分」の探求を続けてきたのにちがいない。
人生最期の瞬間、「我が人生に悔いなし」と言い切れる人がどれだけいるだろうと考えたとき、そう思わざるを得ないのだ。
死にゆく人の多くが、自分が心から望む夢や希望はあっただろうと。
食欲や性欲、睡眠欲などの「生理的欲求」。
安全な住処や恐怖や混乱のない状態を求める「安全の欲求」。
家族や友人に囲まれ精神的に安定した状態の「所属と愛の欲求」。
社会的な評価を求める「承認の欲求」。
これらの欲求が段階的に得られた後にくるのが、最も高い段階の5番目の「自己実現の欲求」である。
より高次を目指そうとする人は、たとえ4つ目までの欲求が満たされたとしても満足できないらしい。
それは、自分本来の、自分らしい生き方をしていないから。
地位も名声も得て、金銭的にも裕福な人が満たされない思いを抱えるという話をよく耳にするが、それもこの「自己実現の欲求」が満たされていないからだと思えばうなずける。
何かの肩書きを得るのはむしろ簡単なのかもしれない。
本当に難しいのは、「自分自身になる」ことなのだ。
自分は何を求めているのか。
あるいは、他人から何を求められているのか。
その求めに対する、「自分に合った自分らしい努力」を続けることで、最終的な自己実現という目標を達成することができるのではないだろうか。
(171027 第368回)