仕事って、たぶん、自分の居場所を好きになるところから、始まるんだと思うんです
『ナイフ』や『エイジ』、『流星ワゴン』などの著書で知られる作家、重松清氏の言葉である。現代の家族をテーマに、数々の話題作を発表。出版社勤務を経て執筆活動に入ったという重松氏の仕事観である。ほぼ日ブックスの『はたらきたい』から抜粋。
生きていく上で、仕事というのは大きな意味をもつ。
程度の差はあれど、多くの人は一日の三分の一を仕事で費やすのだから、それもそうだろう。
サラリーマンとして50年間働けば、約10万時間。
何らかのかたちで生涯現役というなら、それ以上。
睡眠時間や食事の時間、それなりの自由時間を差し引いたとしても、残りの時間のすべてが仕事の時間だと考えるなら、その仕事にどう向き合うかで人生は楽しくもなり、辛くもなる。
企業づとめにかぎらず、人間、働くことなしに生きていくことはむずかしい。
生きるために働いているのは他の生き物もおなじ。
動物も植物も、鳥や虫も、細菌だって働いているのだ。
働くとことは、生きること。
生きるために、生き物はみんな働くようにできている。
重松氏はこう続ける。
「自分のいるところを好きになる才能に恵まれた人は、やっぱり、うまくいくんじゃないでしょうか。逆に言えば、この場所を愛せないヤツは、よそを愛することなんかできないような気がするんです。『自分の立ち位置を愛せないでどうするの?』と」
与えられた場所やものを、とりあえず受け入れてみよう。
好きか嫌いかの判断は、それからでも遅くはない。
どうしても好きになれない、性に合わない、肌に合わないというなら、そのときどきで改善策を考えればいい。
イヤイヤ過ごしても一生。
楽しく過ごしてもまた一生。
どちらを選ぶかは自分次第ですよ。
(171128 第377回)