努力は「天命」さえも変える
明治時代の自己啓発書、福沢諭吉の『学問のすゝめ』より抜粋。学問の大切さをベースに、一般庶民にもわかりやすく「実学」の重要性を説く。明治時代に22万部も刊行したという大ベストセラー本は、今なお色あせることなく読み継がれている。
何ごとかを成し遂げた人たちは口をそろえて「努力すれば必ず報われる」と言うが、それは本当だろうか。
そうとも言えるし、必ずしもそうとは言いきれない。
ひとかどの人物たちが言う「努力」とは、結果的なもの。
がむしゃらにやっていたら結果がついてきた、というときの「がむしゃら」が努力だったというだけである。
努力を努力と思っていないのだ。
無我夢中で目の前のことに取り組んでいると、思ってもみなかった境地にたどり着いていた、なんてことがある。
それが、福沢諭吉の言う「努力は天命さえも変える」ということなのだろう。
『中庸』の「天の命ずるこれ性と謂う」。
生まれながらに備わった性質、天性である。
子どもの成長がそうであるように、「これはなんだろう」「あれはなんだろう」と何かに興味をもつことで自ら学び、しだいに天性が発揮されていく。
そうやって学びながら生まれもった性質を生かしつづければ、本来の性質に新たな性質が加わってくる。
眠っていた才能が開花するのだ。
学問は裏切らない。
すぐに役立つものではなくても、血肉となれば、いつか生かせるときがくる。
(171204 第379回)