ストレスは生活のスパイスである
ストレス学説を唱えたカナダの生物学者、ハンス・セリエの言葉である。彼は、ストレスとは「外部からもたらされる歪み、あるいは歪みの原因」だと定義し、そのことによるさまざまな反応は有害物質から身を守るための反応であり、生命維持装置の役割りをしているという。
生きているかぎり、ストレスはつきまとう。
そもそも生まれ落ちる瞬間から、ストレスはある。
狭い産道をとおる赤ん坊のストレスたるや、産みの苦しみを味わう母親のそれと同じだろう。
母親と赤ん坊が、この世で最初に行う共同作業こそ、ストレスを味わうことではないか。
だとしたら、生き物はある程度のストレスには耐えられるようにできているし、生命自体、ストレスを必要としているのにちがいない。
ハンス・セリエも言っている。
「ストレスというものが存在しなければ、人間は滅んでいただろう」と。
生姜やネギ、にんにくといった薬味は、ちょっと加えるだけで素材の味をひきたたせる。
シナモンやナツメグ、カルダモンなどのスパイス、バジルやコリアンダー、パクチーなどの香草、薬草も同じ。
料理はもちろん、生活の中にほんの少しそれらを加えるだけで、リフレッシュしたり豊かな気分になったりする。
食べ過ぎがご法度なのと同じように、過度なストレスは問題外だが、適度なストレスは血肉になり成長を促す。
「すべてのストレスは、私たちに傷跡を残していきます。でもそれは同じようなストレスに襲われたときに、今度は私たちを守ってくれるのです」
枝を切られた傷跡が強くなる樹木たちのように、ストレスによってできた傷跡は外敵から身を守ってくれる。
(180116 第393回)