心は気を率い、気は血を率い、血は身体を率いる
以前にも紹介した明治の文豪、幸田露伴の言葉である。同じく『努力論』から抜粋した。当たり前のことを当たり前に、小さな努力を重ねることによって良い人生になるのはもっともな話。ただ努力の仕方が問題なのだ。露伴はその方法を教える。
「これもしたい」「あれもしたい」とパワフルな人はエネルギーに満ちている。
元気な人というのはそういう人。
元気の気にも、良い気と悪い気がある。
ギラギラとした欲深い気は、たとえ元気であろうと近寄りたくない。
溌剌とした健全な良い気で満たすにはどうすればいいか。
血の巡りをよくするのだ。
血行と気は深いかかわりがあるという露伴。中医学も学んだのだろう。
「気と血が一体となるのが生で、気と血が離ればなれになるのが死である」と説いている。
心の病と言われる「うつ病」は、自律神経の乱れにより発症する精神疾患のひとつ。
ストレスや生活習慣の乱れが原因と言われている。
中医学では、まず「肝」の失調を疑うという。
肝臓は体内の毒素を分解する器官、デトックスの器官だから、不調をきたせば血液の循環が悪くなるのは当然。
体はどんどん冷えていく。
うつ病患者は、ほぼ冷え性だというのもうなずける。
冷えは万病の元。
気を奪う元でもある。
心は気を率い、気は血を率い、血は身体を率いる。
「こうありたい」「こうなりたい」と意識して取り組めば、血が通うようになり、そうなれば身体は自然、頑健になる。
きれいな血であれば、発する気も良い気になるに違いない。
気力を養うためには精神論ではなく、まずは健康な体づくりからはじめよう。
(180502 第426回)