修行で、もっとも大切なのは、姿勢と呼吸の仕方です
アメリカにおける禅の基礎を築いた禅僧、鈴木俊隆禅師の言葉である。以前にも紹介したことがあるが、かのスティーブ・ジョブズとも親交があった人物。ジョブズのバイブルでもあった禅師の著書『禅マインド ビギナーズ・マインド』から再び抜粋した。再読すると、以前気づかなかったことに気づく。それが読書の醍醐味だろう。
以前はまったくスルーしたこの一文に、なぜ目がとまったのか。
答えは簡単、「姿勢と呼吸」である。
修行とくれば、姿勢と呼吸。
修行だから当然、この2つは基本中の基本だろう。
だがしかし、姿勢と呼吸を言葉のまま解釈しては、この一文、「修行なんだから、そりゃあそうじゃないか」で終わってしまう。
見方を変えてみよう。
鈴木禅師は、こうも言っている。
「禅は、なにか気晴らしの興奮ではなく、毎日のやるべきことに対して、集中することです」
禅と言うと、坐禅をしたり、特別な道場での修行だと思っている人は多い。
ところが、禅僧たちに言わせれば、日常こそが禅の修行場である。
事実、ジョブズも出家して禅僧になりたいと通っていた道場の禅師に懇願したものの、「君にはやるべきことがあるだろう」とあっさり断られたという。
君にとっての禅は出家することではないと、戒められたのだ。
修行において、最も重要である姿勢と呼吸。
それは、物事に向き合う姿勢と連続する習慣。
型とリズム。
とでも言えばわかるだろうか。
鈴木禅師の著書もそうだが、修行を日常という言葉に置き換えると、禅のなんたるかが胃の腑に落ちる。
一行三昧。
正しい姿勢を守り、一瞬一瞬、今この瞬間に行っていることに集中する。
その連続性こそが禅。
「この単純な修行(日常)を、毎日続けていれば、驚くべきすばらしい力がつきます」
目の前のやるべきことに集中し、日々リズム良く過ごしていくことで、自分という個性が確立していくのだ。
(180509 第428回)