己に対して忠実なれ、さすれば夜の昼に継ぐが如く、他人に対しても忠実ならん
シェークスピアの『ハムレット』第1幕、第3場より、老ボローニアスの教訓のひとつ。人間とは何かを問い続け、数多くの作品を生み出したシェークスピア。人間の本質をあぶりだし、物語の登場人物にその真理を語らせる。『ハムレット』では老ボローニアスの口を借りているようだ。
「己に対して忠実なれ」。
おそらく「自分自身に正直であれ」ということだろう。
誰かや何かに忠実に尽くす前に、自分に忠実に尽せ、とボローニアスは言っているのだ。
みんながこうだから、こう言っているから、と他人に迎合する。
評価を得ることを期待したり、自分を蔑ろにして誰かのためだけにがんばる。
それで果たして本当に自分を生きていると言えるだろうか。
本心は違うのに、うわべだけを取り繕って良く見せようとしたり、他人と合わせていても、自分も相手も傷つけるだけ。
世の中の常識や価値観は、時とともに移ろいゆく。
そんなものにしがみつくのはかえって危ない。
一人ひとりに与えられた時間は限りあるもの。
本心をひた隠して生きることは、自分の時間を無駄遣いし、相手の時間を奪っているのと同じ。
人と違ってもいいじゃないか。
自分に正直に生きることは、自分も他人も大切にすることになるのだから。
本心は、自分らしく、より良く、楽しい人生を歩みたいと願っているはず。
体に異常はないか、心は落ち着き安らいでいるか。
時には立ち止まって、自分の心と体の声に耳をすましてほしい。
(180819 第461回)