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紺碧の将

動き続ける世界の変化を凝視し、自己と世界との関わりを絶えず創造していくのが「立命」という最高の生き方だ

玄侑宗久

 またまた困った時の玄侑さん。どのページを開いても、どこを読んでも、禅的思想であるのが胃の腑に落ちる。禅僧だから、あたりまえか。しかも作家だし。まじめな話も、いちいちおもしろい。
 
 その心を尽くす者はその性を知る。
 その性を知れば則(すなわ)ち天を知る。
 その心を存し、その性を養うは、天に事(つか)うる所以なり。
 妖寿(ようじゅ)たがわず、身を修めて以って之をまつは、命を立つる所以なり。

 

 かの有名な「立命」の出所、中国古典『孟子』の一節である。

 

(自分の心を精一杯、尽くせば、その心の本質を知ることができる。
 心の本質がわかれば、その心を与えてくれた天の心がわかる。
 天の心がわかったら、その心を保ちつづけ、養っていく。それが天に仕える道である。
 短命であれ、長命であれ、ひたすら天命にしたがい、ただひとすじに修練しつづける。
 そうやって心静かに寿命をまつことが、天命を尊重する、天の道を生きることだ。)

 

 ちなみに、心の本質とは、人が生まれながらに持っていると言われる4つの心。
 惻隠(憐れみいたむ心)・羞悪(悪を恥じる心)・辞譲(譲りあう心)・是非(良し悪しを見分ける心)という四端の心である。
 
 自分ができることを精一杯、心尽くしたことは、人に喜ばれる。
 それこそが、天が与えてくれた天分だろう。
 天分がわかれば、あとは、ただひたすら修練あるのみ。
 
 時代は今、大転換のときをむかえようとしている。
 しかも、すべてのものがあまりの速さで変化している。
 新しい時代は、きっとこれまで以上に大きく変わることだろう。
 これまでの常識も価値観も、ぜんぶひっくり返って。
 
 玄侑さんの言葉にはつづきがある。
「むろん変化を凝視するということは、変化しないものもはっきり見えており、その上で創造的に生きることである」 と。

 
 変化しないものとはなにか。
 天地自然、ものごとの本質、本源……。
 中でも、もっとも変化しないもの。

 それは、持って生まれた「天分」ではないか。

 

 天分こそ、不易流行の「不易」そのものだと思うのは、気のせいだろうか…。

 

「美しい日本のことば」連載中

(190324 第524回)

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