〝三種の神器〟と〝稲穂〟を発揮すれば、道は拓けるのです
「博多の歴女」こと白駒妃登美女史の言葉を紹介。福沢諭吉に憧れ、慶應義塾大学へ進学したという彼女。航空会社に勤務したのち、コンサルタントとして活動中に大病を患い、余命宣告を受けた。奇跡の生還を果たした彼女が拠り所としていたのが、歴史上の偉人たちの生き様である。以来、先人たちの教えを伝える先導者となって活躍している。この言葉は、著書『「古事記」が教えてくれる 天命追求型の生き方』からの抜粋である。
「令和」という新しい時代の幕開けである。
新元号が『万葉集』からの引用であるように、新時代は原点回帰の時代といってもいいだろう。
あらためて、原点に帰る、根本を見直す時がきた。
日本最古の歴史書『古事記』。
この中に、これからの時代を生き抜くヒントが隠されている。
日本人が培ってきた、日本人としての生き方。
授かった命を、存分に輝かせて生きていく、天命を追求していく生き方である。
天孫降臨の際、天照大神が瓊瓊杵尊に授けた三種の神器。
八咫鏡、天叢雲剣(草薙剣)、八尺瓊勾玉。
これらは何を意味しているのか。
白駒女史いわく、
「三種の神器は〝和の心〟を象徴しているのではないか」
事実、南北朝時代の公卿、北畠親房が記した著書『神皇正統記』にそれを示唆する記述があるという。
要約すると、
鏡は「清き明けき直き心」
剣は「決断」
勾玉は「慈悲」
つまり、
「清らかで明るく素直な心」と「困難に立ち向かう心」「相手を思いやる心」。
この3つの心こそ「三種の神器」。
そして、これらに共通するのが「磨くもの」であるということだ。
さらにもうひとつ、天照大神は生きていくのに必要なものを瓊瓊杵尊に持たせた。
それが、稲穂。
生命を維持していくために最も重要な、食料となるものを与えたのである。
「かわいい孫を旅立たせる時に、普通なら、たくさんのものを持たせたいと思うはずですが、アマテラス大神はそうはしませんでした。
何かを始めようとする時、足りないものに目を向けるのではなく、今あるものに目を向けること。
手持ちのものを最大限に生かして始めること。
あなたの持っているもので挑戦すること。
そういうメッセージが『古事記』には込められていると思うのです」
この世に生を受けた時、天から授けられた稲穂。
それが、性格、能力、持ち味、才能、天分。
この稲穂を成長させ、実らせていくのに必要なものが三種の神器。
「三種の神器を心に宿し、和の心を磨いて生きていけば、本来いるべきところ、最もふさわしい場所へ運ばれていきます」
いかがだろうか。
これ以上、何も言うことはあるまい。
原点回帰。
今求められているのは、これなのではないか。
(190501 第535回)