一番大切なものは、一番慎重に隠されている。自然においても人間においても
彼の言葉をあげればきりがない。小林秀雄である。昭和を代表する知識教養人であり批評家だっただけに、小林の弁はときに耳に痛い。しかし、おそらく、そういう人こそ情に厚く、思いやりに長けているような気がする。単なる憶測に過ぎないのだが・・・。
「大切なものは目に見えないんだよ」
星の王子さまの言葉だ。
あまりに有名だから、説明する必要もないだろう。
人は見たいものを見、聞きたいことを聞く。
それが全体の、ほんのわずかな一部であったとしても。
それゆえ、間違いを犯す。
失敗もする。
だからなんとか、その負のスパイラルから抜け出せないものかと思う。
何かに書いてあった。
「飛ぶ鳥に気を取られて背後の空の重大さを見落としてはいないか」と。
柳が緑で花が紅なのは、単なる偶然ではない。
緑である理由、紅である理由があったのだ。
相対するものの背景に、どんな歴史があったのか。
その言葉の向こうには、どんな思いがあるのか。
文章には書かれていない、作者が本当に伝えたいことは何なのか。
目に見えるものは、氷山の一角。
眼前に広がる世界はほんの一部であり、その裏側にこそ真実が潜んでいる。
ほんとうにそのものを知りたいと思うなら、見えないところ、聞こえないところに意識を向けてみよう。
植物の根も、生き物の内臓も、生命にもっとも重要なものは、こっそり隠されているのだから。
(190604 第545回)