〝念ずれば花開く〟とは、夢を叶えるためのスタートラインに立てること
グラウンドの中で白球を追いかけていた高校球児は、世界へ飛び出し、植物を追いかけるプラントハンターになった。明治から続く花と植物の老舗卸問屋「花宇」5代目、西畠清順氏である。
彼がデザインする空間は、植物と人との新しい出会いと共存だ。著書『教えてくれたのは、植物でした』では、彼の植物愛と信条に触れることができる。
念ずれば
花ひらく
苦しいとき
母がいつも口にしていた
このことばを
わたしもいつのころからか
となえるようになった
そうしてそのたび
わたしの花がふしぎと
ひとつひとつ
ひらいていった
詩人坂村真民の「念ずれば花ひらく」である。
この詩に勇気を得た人は多いはず。
辛いことや苦しいことがあると、このまま永遠に続くのではないかと嫌になるものだ。
反対に、楽しいことや嬉しいことは、このまま時間が止まればいいのに…と思ったり。
人というのは、そういうもの。
良いことも悪いことも、自分に都合よく考えてしまう。
坂村真民の母親の口から出た言葉は、辛く苦しくとも、「今」を一心に生きるための念仏だったのだろう。
タネの落ちた場所がどこであろうと、
根を張り、芽を出し、水を求め、光を求め、
天に向かってすくすく伸びる草木に、自分の一生を重ねたのかもしれない。
念ずれば花ひらく
念ずれば花ひらく……。
そうして、ひとひら、ふたひらと花はひらき、
「坂村真民」という実を結び、幸せの種は蒔かれたのだ。
「植物が花を咲かせるという行為は、植物学的にいえば、実をならせるための準備行為です。つまり、植物にとっては実こそがゴールであり、花はスタートの合図である、ということ」
と、プラントハンター。
古来より、花が咲くことは「何か物事が始まる前兆」との言い伝えがあるのだと。
花を咲かせることは、結実させるための下準備。
目の前のことに一心になれば、やがて花はひらくだろう。
そうして土俵にあがれたら、そこからが本番。
実がなるかどうかは、あなた次第。
(190809 第565回)