学ぶとは、この世界をよりシンプルに見るための手段なのです
無類の読書家として知られる、ライフネット生命保険株式会社創業者、出口治明氏の言葉を紹介しよう。「すぐに役立つものはすぐに陳腐化する」と、どこかで聞いたことのあるセリフで、簡単便利な現代社会に警鐘を鳴らす。数多くある著書の中のひとつ『人生の教養が身につく名言集』は、出口氏の解説がいい。なるほどなるほど、と頷くこと多し。
「なんのために勉強するの?」
子供にそう聞かれたら、あなたは何と応える?
「どうして勉強しないといけないの?」
子供の頃、そう思ったことはないだろうか。
おそらく、「勉強」という言葉に抵抗感を覚える人は多いのではないかと思う。
現役の学生であれば、なおさらだろう。
自ら進んで勉強するというのは、なかなかむずかしい。
学生時代は勉強嫌いだった人も、大人になって学ぶのが楽しくなったという人はたくさんいる。
そして、みんな口を揃えて言う。
「学生時代にもっと勉強しておけばよかった」と。
しかし、大人になってからの学びの楽しさを、学生時代も同じように味わえるかと言うと、疑問符が浮かぶ。
なぜなら、大人の学びの楽しさは、経験後に味わうものだから。
「わからないときは、何事であれグチャグチャとしていて複雑です。ところが、わかることでグチャグチャしたものがほどけて、シンプルになっていきます。これが『わかる』ということ」
大人になって、「ああ、そういうことだったのか」と思うことは多くなる。
わからないことを知る楽しさや喜びは、もしかすると、経験と結びつくことが多くなるからではないだろうか。
あのときの経験は、このためだったのか。
あのときの言葉は、こういう意味だったのか。
あのときのあの出来事は、こうなるためだったのか。
あのときあの人と出会ったのは、このことにつながるのか。
「点と点は先を読んでつなげるのではなく、後から振り返って初めてできる」と、スティーブ・ジョブズは言った。
人生に無駄なことはない。
「あのこと」は、学ぶことで「このこと」につながっていることがわかる。
ひとつ学べば、世の中がまたひとつシンプルになり、学ぶほどに生きやすく、人生は楽しくなるのだと、出口氏は言う。
「なぜ、なんのために勉強するの?」
子供にそう聞かれたら、応えてほしい。
「今よりもっとおもしろい、楽しい人生が待ってるからだよ」と。
(190824 第569回)