「何かしよう」と焦ったときほど、頭を「空っぽ」にする
ベストセラー本は置かず、店長自らが読んでいいと思う本しか取り扱わないという独特のスタイルで全国に多くの固定ファンを持つ書店「読書のすすめ」。店長の清水克衛氏が月一回会員向けに書く会報「成幸読書」がこれまたオモシロイ。その中にこの言葉があった。
心を空っぽにする。
頭を空っぽにする。
胃を空っぽにする。
どれもこれも理屈ではわかっているのに、実行しようとすると難しい。
なぜか。
「そうしなければいけない」という思いに囚われるから。
それを、執着という。
「〝何とかしなくちゃいけない〟というのは結局、〝執着〟なんですね。『長く生きなきゃ』『痩せなくちゃ』『もっとお金を稼がなきゃ』『あいつを絶対に見返してやらなきゃ』…そんな風に、ほとんどの悩みは〝執着〟から生まれてきます」
と、清水店長。
じゃあ、どうすればいいのか。
他のもので代用してはどうか。
つい最近、こんなことがあった。
夜遅く、身内からパソコンで作ったデータをプリントアウトしたいのだができなくて困っていると連絡があった。聞くと、今まで同じ操作でプリントできていたのに、突然プリンターが作動しなくなったという。パソコンとプリンターの接続を確認しても問題ないし、あれこれ調べてみたのだがよくわかないと。
それで聞いてみた。そのファイルは、どれくらい使っているのかと。
「上書きで保存しているんじゃない?」
「ああ、している。何度も」
「きっと、それだよ。ファイルが重くなっているんだと思う」
結局、新しいファイルに置き換えて事なきを得た。何時間もパソコンと格闘していた本人は、狐につままれたような頓狂な声をあげて笑っていた。
表面上ではわからなかったが、ファイルはすでにぎゅう詰めだったのだろう。
器は空間がなければ用をなさない。
有の以て利を為すは、無の以て用を為せばなり(「老子」)。
空間は気が満ちるところ。
いい空間であれば、いい気が満ちる。
だから焦ったときは、ゆっくり深呼吸してみよう。
溜まった邪気や邪念を吐き出し、身体いっぱい新鮮な空気で満たすのだ。
無駄な時間と思うなかれ。
空っぽにする時間が新しい発見を生む。
(191017 第584回)