自然に失敗はありません
366日分の花と言葉を集めた写真集『一日一花』を、毎日1ページずつ眺めている。花人、川瀬敏郎氏がまとめたものだ。自然の姿そのままを切り取ったような草木花と添えられた言葉が、その日一日を祝福してくれるような気がして心落ちつく。クリスマスを終えた12月26日、幼いクリスマスローズの頭上で、枯れながらも背筋を伸ばし、こぼれ落ちる時を待つ綿。まるで命を託すかのような生と死の饗宴。その綿の姿に感服した川瀬氏の言葉である。
ポスト・イット、シャンパン、ポテトチップス、ダイナマイト、ペニシリン、ペースメーカー、タルトタタン、チョコチップクッキー。
これらはすべて、失敗から生まれたものだ。
世の中にはまだまだたくさん、失敗や偶然から生まれたものがある。
発明王のエジソンは、失敗の天才だった。
幾度もの失敗を繰り返し、電話や蓄音機、白熱電球などを生み出した。
彼は言った。
「失敗ではない。うまくいかない一万通りの方法を発見したのだ」と。
失敗は成功のもと。
あの失敗がなかったら。
あのことがあったから。
だれもが、一度はそういう経験をしたことがあるはずだ。
失敗とはいったいなんだろう。
何をもって失敗というのか。
失敗と成功の違いはなんなのか。
長い目でみれば、どんなことも結果オーライになるというのに。
寒い冬のあとは暖かい春が来るし、
春が過ぎれば夏、秋と、
季節は姿を変えてやって来る。
陽極まれば陰となり、陰極まれば陽となる。
枯れた姿の綿の木に、作為の入る余地はない。
硬く閉じた綿の実は、宇宙を包み込んで時を刻む。
死んでは生まれ、生まれては死んで。
自然界に失敗はない。
生と死が一連なりであるように、失敗と成功もつながっている。
(191227 第604回)