問題に囚われてはいけない、その向こう側を見るんだ
1998年に公開された映画『パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー』の中で、主人公ハンターを目覚めさせるきっかけをつくった天才病の老人アーサーが語ったセリフである。アーサーに「パッチ(傷をなおす)」というニックネームをつけたのがこの人。これを機に、アーサーは「パッチ・アダムス」としてユーモーアによって患者の心を癒してゆく。実際のモデルとなったアダムス氏は、今も現役のクラウンドクターとしてジョークで患者を笑顔にしているそうだ。
人生はいいことばかりじゃない。
悩みや問題はつきものだ。
そんなことは、言わなくても誰でもわかる。
わかっているのに、人間というのはそれを目の前にすると悩み、苦しむ。
人間だけに与えられた想像力という賜物を、正しく使いこなせていないからだと思う。
人は追い詰められると視野が狭くなる。
ライトの光だけを追いかける猫のように、一点だけがすべてになってしまう。
それでは美味しい餌にもありつけないし、反対側の抜け穴にも気づけないだろう。
天才病のアーサーは、指を4本立ててハンターに問う。
「何本に見える?」
「4本です」と、ハンター。
「ちがうちがう、わたしを見るんだ! 指の向こう側を見るんだ! 何本に見える?」
焦点がずれ、視界がぼやけたハンターは答える。
「8本です」
「8本! 正解だ! 恐れや既成概念で物事を見るんじゃない。人が見ようとしないものを見るんだ。世界を新しい視点で見れば、そこに真実がある」
と、こんなやりとりだったように思う。
問題や悩みに囚われてしまうと、真実は遠ざかる。
問題や悩みの奥には何が隠れているのか。
そこに答えはある。
目に見えるものはほんのわずか。
見えないところにこそ、大きな真実が隠れている。
問題は問題ではなく、悩みも悩みではない。
想像力という賜物を正しく使えば、問題は楽しみに、悩みは喜びに変わるかもしれない。
まずは焦点をズラしてみよう。
新しい発見があるはずだ。
(200227 第620回)