私は勝ち続けることで成長したんじゃなく、負けて強くなってきたんです
「霊長類最強女子」との異名を持つ、元女子レスリング選手・吉田沙保里の言葉を紹介。頂点を極めた彼女の言葉はあまりにも有名だから知っている人も多いはず。そこをあえて取り上げたのは、生命の本質だと思ったからだ。この言葉のように、わかっているようでわかっていない真実は、まだまだたくさんあるだろう。
強いものに人は惹かれる。
人だけじゃない、生き物はみんな強者に憧れる。
強くなりたい。
力をつけたい。
強い力とは、いいかえれば生命力だ。
強さや力を求めるのは生き物の本能。
では、強さとはなにか。
かつてイチローは言っていた。
「4000安打の裏には、8000回以上の悔しい思いがあった」と。
バスケの神様マイケルジョーダンも、
「成功したシュートの数を超える失敗があった」と語っていた。
「私は勝ち続けることで成長したんじゃなく、負けて強くなってきたんです」
試合に負けて泣きじゃくる吉田沙保里の姿を、何度か目にしたことがあった。
あまりにも多くの涙を流したのだろう。
彼女の笑顔は人を和ませ、きらきらと輝いている。
強さは弱さに支えられている。
弱さを知っているから、強くなれる。
ほんとうの強さを手に入れた人の生命力はたくましく、あたたかい。
強さとは、どうやらあったかいもののようだ。
敗北 → 努力 → 成長 → 勝利 → 敗北 → 努力 → 成長 → 勝利……。
くりかえしくりかえし、いつのまにか真の強さを手に入れて、
人は、やさしく、まるく、おだやかに、
あったかくなってゆくのだろう。
そういえば、子育ての教訓のひとつに、
「親は子に失敗をたくさんさせる」というものがあった。
健やかに育ってほしいと願う親。
強く、たくましく、やさしい人に。
それはそのまま年齢問わず、一人ひとりの願いでもあるのではないか。
もしも負けや失敗が続いているなら、
それは成長のチャンス。
眠っている、ほんとうの強い力が目覚めようとしているのかも。
今回は、「あわい」を紹介。
間と書いて「あわい」。古典読みなら「あはひ」。音の響きからでしょうか。「あいだ」と読むより、やわらかい感じがしませんか。続きは……。
(200315 第624回)