いかに多くの者が、本を読むことで、人生の新たな段階へ進めたことか。
ナチュラリストのバイブル『ウォールデン 森の生活』で知られるヘンリー・D・ソローの言葉を紹介。俗世間から離れ、この世の真理を求めて森へ入り、2年半の自給自足生活を送ったソロー。その生き様に憧れる人は後をたたないが、現実から逃れるためだけならやめたほうがいい。ソローのやったことは現実逃避ではなく、現実を生きることの真髄を心ゆくまで味わい尽くすための試みだったのだから。
一人の人との出会いで人生が変わるように、
一冊の本との出会いで人生が変わることがある。
自分一人の人生だけでは体験できないことも、本を読むだけでさまざまな疑似体験ができる。
国も人種も、時間も空間も、いろんな垣根を超えて、まったく知らなかった世界にゆける。
足を運んでの体験には物理的な限りがあるが、読書にはない。
いつでも、どこでも、見知らぬ場所へ旅立てるし、新しい出会いもたくさんある。
知らないことを知ることは喜びでもあるし、いかに自分が何も知らなかったかを自覚できる。
ソクラテスのいう「無知の知」を実感するはずだ。
それがわかったとき、新しい自分との出会いが待っている。
ただし、本を読むにも注意が必要。
「運動が肉体に施すものを、読書は精神に施す」と、ある先人は言い遺しているが、
どんなことを精神に施すのかは、読む本によるだろう。
どんな人に出会うかによって人生が左右されるように。
ネット社会の今だからこそ、唯一無二の一冊を手に入れてはどうか。
その一冊は、生涯の友となるはずだ。
広く浅い関係も悪くはないが、
新たな段階へ進もうとする背中を押してくれる生涯の友に勝るものはない。
今回は、「藤浪」を紹介。
小さな紫の花房が風にたなびいている姿が波を思わせたのでしょう。続きは……。
(200604 第644回)