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紺碧の将

自信ある自己流は、自信なき正統派に優る

アーノルド・パーマー

 赤、黄、白、緑の4色傘のロゴマークでおなじみのブランド「アーノルド・パーマー」。レナウンが立ち上げた日本独自のこのブランドの名は、アメリカのプロゴルファー、アーノルド・パーマーから名付けられたという。戦後に起こった空前のゴルフブームでのことだ。時代を反映したこのブランドは、ゴルフファンのみならず多くのファンを獲得。戦後最大のブランドとして大成功を収めた。その事実は、アーノルドの言葉とリンクする。
 
 多くの場合、自己流といわれるものは正統派からは嫌われる。
 ルールに則った正しさからは程遠いから。
 
 しかし正統派と言われるものも、つきつめればオリジナルだったはず。
 それがコピーの連続で原型がつかめなくなっていき、わからない部分だけ後に続く人が追記して、新たなルールを作ってきただけではないか。
 
 そもそも正しさとは不確かなもの。
 そんな不確かな正しさを、
 自信のなさの隠れ蓑にしている多勢より、
 独立独歩であっても堂々と自分の信じた道をゆく一人の方に、人は魅了される。
 
 かのベートーヴェンもそうだった。
 ベートーヴェンはピアニストとしては正確ではなく、指の使い方もときどき間違い、音質はぞんざいだったと、ある男爵が言い遺している。
 それでも彼の演奏を聴くものはみな、そんなことも気にならないほど彼のピアノに酔いしれたという。
 
 芸術にかぎらず、どの分野においても古色蒼然たる正統派に風穴を開けてきたのは自信ある自己流だった。
 
 ビートルズもローリング・ストーンズも、ピカソも北斎も、西行や良寛さんもそうだろう。
 
 時代が大きく変わろうとしている今、これまでの常識を覆すのは、
 だれかに刷り込まれた正しさではなく、
 これでいいんだという自分を信じる力、

 自分への信頼から生まれるものではないだろうか。

 

●「美しい日本のことば」連載中

今回は、「藤浪」を紹介。

小さな紫の花房が風にたなびいている姿が波を思わせたのでしょう。続きは……。

●「日日是食日」連載中

(200608 第645回)

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