服飾のすべては魚市場で学んだ
流行にとらわれないオリジナルのテキスタイルで服作りをつづけるファッションデザイナー、皆川明氏。NHK番組『日曜美術館』で「100年つづく人生(デザイン)のために」と題して、そのスタイルの原点を語っていたときに出てきた言葉だ。魚市場でアルバイトをしていたときに気づいたという。
流行という言葉が示すとおり、人の関心は移り気だ。
ものごとは変化し続けるのだから、仕方ない。
けれど、よくよく見れば、変化のなかにあって変わらないものはたしかにある。
朝がきて夜がくること、
春は桜、夏は蝉、秋はもみじ、冬は雪という四季折々の風物詩、
喜び、悲しみ、笑う、怒る、好き嫌いという感情、
人と人、人とものが出会うこと、
そしてなにより、
生まれては死ぬという命の循環。
命の営みは、変わるのに変わらないものの究極だろう。
魚市場に目を転じてみると、
そこはまさに不易流行。
日々獲れたての魚介類を、漁師と商人が取引する。
今も昔も変わらず求められるのは「質の良さ」。
そこに皆川氏はものごとの本質を見出した。
「素材が良ければ人は集まる」
皆川氏は、「100年は続けたい」と願って立ち上げたブランド『ミナ ペルホネン』を、素材とテキスタイルデザインに特化することを心に決めた。
結果、他とはちがう個性的なファッションとして注目を浴びるようになった。
固定ファンが増え、何年も着つづけてくれる洋服も多いという。
ものごとが急速に変化している今こそ、早急ではない時間を味方につける方法を考える。
10年、100年、1000年という長い時間を考えた時、今できることはなんなのか。
「つづく」ヒントは、つづいている日常の中に転がっている。
今回は、「草いきれ」。夏草の生い茂る炎天下では、熱気ととともにむせ返るほど草が香ります。これが「草いきれ」。続きは……。
https://www.umashi-bito.or.jp/column/
(200810 第659回)