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紺碧の将

コロナ脱毛症

2020.10.10

 今回もまた私の身体異変の話を一つ。色っぽいこと、面白いことを話題にしたいのだがなかなかそれを許してもらえない環境にある。

 

 昨年夏の「急性胆のう炎プラス胆石発見」に続き今回は「円形脱毛発見」となった。あまりの抜け毛の多さに美容院のお兄さんに尋ねたところ、ものの23秒で大小3個の円形脱毛ありと指摘され、うかつにもびっくり仰天の私であった。黒髪ふさふさが唯一の自慢であったのに「何ということを!」が正直な感想である。いつも元気だと高を括っていたわけではないけれど、何か証拠を突き付けられないと現実味を帯びてこないのが私の性分である。

 

 うんと若い頃は、「人間年を取ったら何の楽しみがあって生きているのだろう。おじいちゃん、おばあちゃんになったらおしまい、恋をして、おしゃれをしてこそなんぼ、それができなくなったらこの世とはさようならよね」。と本当に思っていた。だから私の人生暦には60代は赤いちゃんちゃんこを着せられていて、当然70代という数字も言葉も見当たらないというか、想像すらできていなかった。

 それがどうだろう、今は堂々と後期高齢者でありますと名乗り、「恥ずかしながらまだ生きています」と宣ている。若い私が側にいたなら、「まあなんて図々しいおばあさんだこと」と鼻白んだことであろう。確かに人間を長く営んでいると、余計な知恵がついてどんどん横柄になってくる。だから私の場合、この脱毛症は神様の公平な采配なのかもしれない。

 それでもさすがにショックである。梳いても梳いても、なんの抵抗もなく抜け毛の小山があっという間に積もるのである。この勢いだと丸坊主になるのは時間の問題である。手鏡を駆使して後ろ髪を眺めまわすと、なるほど、トップと左右の耳付近に500円玉くらいの白っぽい“円形”がしっかりと見える。その周りも抜け落ちそうなところを必死にこらえているのだから、はかなげにすかすかしている。そして閃いた。この形はコロナ菌と瓜二つであると。これは決して単なる円形脱毛症ではなくて、まさにコロナ脱毛症であると私は命名したい。

 美容師さん曰く、この頃脱毛症がとても増えているとのこと、木曽さんも2~3か月前に何か問題がありましたか? と聞かれたのだが、あると言えばあるのだけれど、そんなこといちいち構ってはいられない。ただ私は大丈夫と思っていても体はSOSをだしているのかと思うと妙にうなだれてしまう。しみじみと我が髪の毛が愛しくなる。

 こんもりとした髪の山は捨てるに忍びず袋に入れて保存すること一週間、随分溜ってきた。「これっきりこれっきりこれっきりですかぁ~」と百恵ちゃんのフレーズが頭をよぎる。坊主頭になってもいいけれどまた生えてくるかしら……希望と未練とが交差する。

 

 私のおしゃれ感として大切にしているのは帽子である。リボンやスパンコール、羽の付いたもの、オレンジ色のストローハット、あるいは黒のトークに黒いレース付きの喪のためのものだったりと帽子はいつも気になる存在であった。和服と同じように帽子も被りなれていないと様にはならず、近頃は帽子への憧れだけが強くなり、気後れしてしまうという淋しい現状である。しかしそうもいってはいられない。薄くなるばかりの我が頭のために、ぜひとも実用性とおしゃれを兼ね備えた帽子を探したいと思う。

 そうそう、このchinomaサイトの代表、髙久多美男氏もついに老眼鏡を購入されたとか。いわゆる一つの敗北宣言とおっしゃっていましたが、いえいえどうぞ無理なさらず、眼鏡スタイルを楽しまれますように。そのうちダンディーな髙久氏に会いに参ります。私はモダンなベレー帽を被りましょうか。

 

写真/大橋健志

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