水の漏る小さな穴が巨船を沈める
アメリカ合衆国建国の父のひとり、ベンジャミン・フランクリンの言葉だ。政治家、外交官、著述家、物理学者、気象学者と、さまざまな顔を持つのも、勤勉で探究心が旺盛だった証だろう。
ベンジャミン・フランクリンのいう巨船を沈める小さな穴とは、僅少の失費のこと。
つまりは「無駄遣いをつつしみなさい」と言っているのだ。
気づかないうちに、すっからかんになって大変なことになるよ、と忠告している。
金銭といえば、どうやら浪費家と節約家では、お金の見え方は違うらしい。
浪費家で有名な文豪バルザックが言うのだから、おそらくそうなのだろう。
短編小説『鞠打つ猫の店』の中で、こう本音を漏らしている。
「浪費家には金は丸いが、節約家には平らなのだ」
浪費家にとってはお金は丸い玉で、コロコロ転がってどこかへ消えてしまうものだが、節約家にとってはせっせと積み上げられる平らなものだ、と。
なるほど平らなレンガであれば、頑丈でなおいい。
巨船を沈没させるのは、なにもお金に限ってのことではない。
どんなことも、最初は小さなことからはじまる。
巨大な船が小さな穴ひとつで海に沈むように、表面上は問題のないように見えることも、わずかな綻びから崩れてしまうことがある。
些細なことは気づきにくい。
とりわけ巨船であればあるほど、ちいさな穴には気づかない。
取り返しがつかなくなる前に、よくよく注意していよう。
なにごとも大事は小事より起こることを、いまいちど忘れないよう心にとめておきたい。
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(210225 第704回)