人と人をつなげ、輪を広げながら前に進んでいきたい。
スポーツバーNumber 代表田代純さん
2017.10.23
栃木県大田原市にある人気のスポーツバー「Number」。代表の田代さんは「やりたいことを詰め込んでいるお店です」と語ります。これまでの道のりや、スポーツをきっかけに生まれる人と人とのつながりについて、ご自身の想いを聞きました。
会社員から飲食の道へ
スポーツバーを経営されるまで、どのような道のりを歩んできたのでしょうか。
大学生の時に、飲食店でアルバイトはしていましたが、まさか飲食の道へ進むとは思っていませんでした。
就職先は東京の医療機器リース会社でした。パソコンと向き合って提案資料をつくり、営業をする日々が続き、社内もギスギスしていて、飲み会でも陰口のような愚痴ばかりで……。これは性に合わないなって思いました。
合わないと感じても、仕事を辞める決意は簡単にはできないものですよね。
もう辞めたいと思い始めたころ、仕事で神奈川県の由比ヶ浜へ行く機会があり、海に立ち寄りました。
私はサーフィンもやるので、湘南といえばメッカですからね。しばらく眺めていたら、白髪のおじいさんも普通にやっていて、そういうところにエネルギーを感じました。「やっぱりこういう環境は最高だな! ここに住みたい!」っていう気持ちが会社を辞めることを後押しをしてくれました。
飲食店をやりたいと思ったので、仕事を辞めた後は由比ヶ浜周辺で食べ歩きをして、美味しいと思ったお店で働かせてもらいました。
なぜ、そのとき飲食の道を選んだのですか。
アルバイト時代の経験が大きかったですね。心のどこかにお店を持ちたいという気持ちがあったのだと思います。直接、お客様と向き合える飲食店の仕事がすごく楽しかったんですよ。
満員電車に揺られて、終電で帰宅。数字だけ見て書類をつくって、相手と心が通う瞬間もない。そんな毎日を過ごしていたので、楽しく働いていた時のことを思い出したのかもしれませんね。
仕事を辞めたあとはどういう将来像を描いていたのですか。
独立は考えていましたが、まず料理を学ぶことが必要でした。本格的なものは経験したことがありませんでしたから。神奈川県で2年、その後は地元(栃木県)に帰ってきて、働きながらひとつひとつ、じっくりと身に付けていきました。
お客様に自信をもって料理をお出しできるようになるまで10年間はかかりました。覚えたい意欲があって、目標のために働いていましたから、刺激的で楽しかったですよ。
スポーツが好きで、人とのふれ合いが好き
独立をされた時、お店のコンセプトは決まっていたのでしょうか。
自分とお客様、またはお客様同士でふれ合いが生まれる店にしようと考えていました。年齢の差や立場は関係なくどんどん楽しい輪が広がっていけば最高だなって。
私自身、フットサル、スノーボード、サーフィン、バスケットボールなどいろいろなスポーツをやっていて、それがきっかけで生まれた縁が人生の財産になっているので、お客様にもそうなって欲しい気持ちがあるのです。
“人とのつながり”を大切にすることが、田代さんの軸なんですね。
根本的に“人”が好きなんですよね。それぞれに物語があって、それに触れられるのが嬉しいんです。
このお店ではライブやスポーツ観戦ツアーなど、いろいろな企画をしています。良いと思ったものを積極的に発信して、こんなに楽しい世界があるんだよって多くの人に伝えていきたいです。
スポーツでもアートでも、きっかけは何でもいいんです。来てくれるお客様の世界が広がって、つながった人同士で楽しく前に進んでいける環境をもっと作りたいです。
それを実現するためにも、応援し合い、喜び合い、元気をもらい合って、ポジティブな連鎖をどんどんつなげていきたいですね。
スポーツバーを経営することで、本当に自分がやりたいことができているという感じですね。
お店がやりたいことをやるためのツールの一つになっていますね。
正直、収入は今よりも会社員の時の方が多かったです(笑)。この地域でスポーツバーの経営は難しいよって言われたこともありました。でも、生きがいを感じられないのなら、お金だけあっても仕方がないですからね。スポーツが好きで、人とのふれ合いが好きな自分にとって、これ以上にないくらい充実した生き方ができていると思います。
新しい世界を広げてもらいたい
気をつけていることはありますか。
当たり前のことを当たり前にすることです。それができないお店や人をたくさん見てきました。料理一つとってみても、「ちょっとなら手を抜いてもいいか」を一回でもやってしまうと、必ずそれは続きます。その“ちょっと”がどんどん大きくなって取り返しのつかないことになってしまうんです。
来てくれたお客様を裏切るようなことは絶対にしたくないですね。
今後の目標はなんですか。
ジャンルを絞りたいですね。例えばサッカーを観戦する日にバスケットの試合もあると、どちらか一方になってしまうんですよね。今日はバスケットを見たかったのにと思うお客様もいると思います。 だからジャンルを絞って、例えばサッカー観戦の店舗、バスケット観戦の店舗というように、それぞれ専門の店舗ができたらそれが理想かなって思っています。
スポーツバーとはどんなところなのでしょうか。
自分の世界が広がるところですね。最初は入りづらいと思う人もいるかもしれません。でも一度その雰囲気を体感してもらえれば、楽しさがわかってもらえると思います。
人と人とがつながって、皆で盛り上がって、楽しんで、高め合っていける場所なんです。だから恥ずかしがらずに、まず一度、足を運んでもらいたいですね。