人生の先を見据えながら、助走をつけることが大切です。
ログコテージ 茶臼の森藤明赳さん
2017.12.21
自然に囲まれ、多彩なログコテージが並ぶ宿泊施設『茶臼の森』を営む藤明さん。脱サラはせず、定年まで勤め上げながら、家族で力を合わせて茶臼の森を経営してきました。「人生の先を見ながら、次の目標に向かって助走をつけておくことが大切なんです」と藤明さんは言います。これまでの道のりなどをお聞きました。
那須の新緑に感動して
ログコテージ『茶臼の森』を始めたきっかけを教えてください。
仕事関係のゴルフで、那須に来たのがきっかけですね。ちょうど新緑の季節でした。当時は東京の会社で働いていたのですが、あまり自然と触れ合う時間がなかったものですから、小雨で濡れた新緑の景色に、涙が出るほど感動したのを覚えています。なんとも幻想的というか、心が癒やされていくんですよね。それで「ここに住みたい!」って思ったのが始まりでした。でも当時はまだ40代、引っ越してきたこの地で、宿泊業をやるとは思ってもみませんでした。
東京で勤めていたのに、住みたいからと那須に引っ越してしまうのはすごい行動力です。宿泊業をやるといった将来像は最初からあったわけではなかったのですね。
アウトドアや物を作ることが好きで、その時その時でやりたいことをやっていった結果、徐々に今の茶臼の森の形になっていきました。最初から計画していたわけではなく、この自然に囲まれた環境と自分の趣味がこうじて宿泊業を経営することになりました。
東京の会社に通いながら宿泊業を始めたのですよね。
脱サラをしようとは思いませんでした。仕事で東京に通うことに大きな利点があったからです。東京には情報も物も集まりますし、仕事でいろいろな人と知り合えて人脈もできました。なによりも両立することで、相乗効果で仕事と宿泊業の双方にハリが出ましたよ。どっちも頑張らなきゃって。
それに宿泊業を始めたからといって、すぐにお客様がたくさんくるわけではありませんから、安定した収入があるというのは大きかったですよ。
会社に勤めている間は、主に妻と娘が茶臼の森の経営をしてくれました。私では気づけないところにも女性目線で気を配ってくれましたし、とても助かりました。
始めるときは周りから反対されることはありませんでしたか。
そりゃ反対されましたよ、周りからも妻からも(笑)。
でも、自分の趣味の延長線上で商売をやっていけるこの仕事を、どうしてもやりたかったのです。会社の仕事は定年を迎えても、宿泊業の方は続けていけますからね。ずっと先の生き方を考えたときに、準備というか、助走をつけておきたかったんですよ。
宿泊業を始めるにあたっては、全財産をつぎ込みました。そうなると他人はともかく、妻だけはちゃんと説得しないと始められませんから、経営計画をつくって説得したんです。
今だから言えますけど、かなり甘い計画だったんですよね。全財産をつぎ込むわけですから、それでも大丈夫、安心だって思わせないといけない(笑)。
しかし今となっては、テレビで紹介されたり、ホームページの影響もあって、年々お客様が増え、甘く見積もったはずの計画よりもはるかに高い結果を出せています。
人生を楽しくするために
宿泊業を経営するにあたり、こだわっていることや気をつけていることはありますか。
清潔感にこだわりを持っています。お客様に気持ちよくログハウスで過ごしていただくことが何よりも大切ですからね。特にトイレやお風呂には気を使います。女性のお客様にとっては一番気になるところですから。
あとは危機管理ですね。自然の中ですから、木が倒れてくることもあります。万が一の事故も起こらないように常に気を配っています。
やりがいはどんなところに感じますか。
例えば、お子さんが自然の中で楽しそうに過ごしている姿を見た時など、お客様が楽しんでいる様子や喜びを直接肌で感じることができるところですね。また、お客様がリピーターになってくれた時は体が震えるくらい嬉しいです。
何回も来てくるのは気に入ってくれた証拠ですから嬉しいですよね。
でもリピーターのお客様が来ると緊張するんですよ。絶対にガッカリさせたくありません。すみずみまで、それこそ掛けてある絵にまで気を使いますよ。よい時間を過ごせなかった、残念だったと言われることが本当に怖い。
ただ来てもらいたいだけではないのです。やはり喜んでもらわないと、この仕事をしている意味がないですからね。
今後のご自身の展望についてお聞かせください。
いつまでもこの仕事ができるわけではありませんから、将来、茶臼の森は継いでもらって、夫婦でまた東京に住みたいと思っています。こちらの暮らしが長くなると、引っ越してきた時とは逆に、今度は東京がリゾート地のような気持ちになってくるんですよね。いつか車の運転もできなくなる時が来るでしょうし、そうなるとこちらの生活も大変になってきます。すぐにではありませんが、そういう準備はしていくつもりです。
よく人には、「将来のために、先を見ながら助走をつけておくことが大切だよ」って言います。例えば仕事が定年を迎えたとき、急にやることがなくなってしまう人もいるんじゃないかと思うんですよね。目的がない人生はつまらないですよ。目的をたてて、それに向かって準備して、そして実行する。その繰り返しが人生を楽しくしていくのだと思うんです。
Information
【ログコテージ 茶臼の森】
〒325-0302 栃木県那須郡那須町高久丙2622-6
TEL.0287-77-1702 FAX.0287-77-1709
ホームページ http://www.chausunomori.com