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紺碧の将

百人(ももたり)のわれにそしりの火はふるも ひとりの人の涙にぞ足る

九条武子

 明治の歌人、大正三美人としても知られる九条武子の歌だ。西本願寺法主の次女として生まれ、のちに男爵九条良致に嫁いだ武子は、すでに心の離れた渡英中の夫の帰国を慈善活動に精を出しながら10年も待ち続けたそうだ。その後は愛の形は変わったものの、生涯のパートナーとして良き夫婦関係が続いたという。
 
 地球と月の関係を紐解いてみると、生き物がツインとなる片割れを求める理由がなんとなくわかるような気がする。
 
 月が引力によって地球のまわりを回っているのも、月と地球がもともとひとつだったからだ。
 繰り返される惑星の衝突によって離れ離れになった2つの惑星は、もう一度ひとつになろうとするかのように、付かず離れずの距離を保ちながら仲睦まじく果てしない時を過ごしている。
 
 残念ながら武子と良致は地球と月のように定められた二人ではなかったと見えるが、互いに大切な人であったのは確かだったのだろう。どんな状況であっても、二人にしかわからない相手への思いはあるものだ。
 
「たとえ百人の人からそしられようとも、たったひとりの涙さえあれば十分です」
 
 友達が100人いようが1000人いようが関係ない。
 たった一人でも信じられる人がいればいい。
 一人でも自分を心配してくれる人がいればいい。
 何があっても守ろうとしてくれる人が一人いるだけで、生きていける。
 
 自分がいなくなったら、あの人は悲しむだろう。
 あの子たちは大丈夫だろうか。

 残されるもののことを考えれば、自分の命は自分だけのものではないと気づく。
 
 悲しい時や辛く苦しい時に、心の支えとなるものがひとつでもあれば救いになる。
 
 あなたが今手にしている大切なものはなんだろう?
 たくさんじゃなくていい。
 

 たったひとつの大切な人やものがあれば、その「ひとつ」に思いを馳せてみてください。
 きっと涙とともに生きる力も出てくるはずです。

 

神谷真理子(本コラム執筆者)公式サイト「ma」

 

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 今回は「夜の秋」を紹介。秋の夜ではなく、「夜の秋」。秋とは言っても夏の季語で、夏の終わりに感じる秋の気配を俳句の世界ではこう表現するのだそうです。続きは……。

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(210828 第743回)

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